「自己憐憫」スイマーのすすめ

以下、USA Swimming HP、4月29日。

私はこの数年、NCAAのディビジョンⅠチームに直接かかわる仕事をした。フロリダ・ガルフコースト大で働き、昨シーズンはフロリダ州立大で働いた。が関わったのは、エージグループのスイマーから、国際大会で米国代表として活躍選手まで様々だ。私が選手たちから受ける質問で最も多いのが、「コーチ、精神的に強いスイマーになるには、何が一番大切だと思いますか?」というものだ。

私の答えは常に同じであり、それはいつも相手を驚かせる。私に言わせれば、精神的に強いスイマーにとって最も重要な属性というのは、自信でもなければ野心でもなく決断力でもない。忍耐力でもないし、情熱でもない。断言できる。最も重要な属性は「自己憐憫(self-compassion)」である。失敗したり目標に届かなかったりした時に、自分を責めない能力。物事がうまく行かない時に自分自身に敵対することなく、辛い時には自己を励まして支える能力だ。

それ以外の精神的な属性というのは、つまるところ「自己憐憫」の副産物にすぎない。たとえばスイマーが、完璧ではない結果に終わるたびに自分を責めていて、どうやって長期的な自信を育むことができるというのか?練習の出来が悪いたびに己をなじっているスイマーが、どうやってトレーニングやパフォーマンスのためのモチベーションを維持できるというのか?飽きもせずに自己批判を繰り返している選手に、水泳への情熱を持ち続けることなどできようか?

実社会では、たしかに自己憐憫にたいして否定的である。若いうちから、自己憐憫に陥らないことが美徳であるかのように頭に刷り込まれる。アスリートは、ひどい練習や悪いレース結果には厳しい自己批判があってしかるべきだということを教え込まれている。自己批判によって怒りを鎮め、「自分に対する最悪の批評家」であることが不可欠である、と信じ込まされるのだ。科学的な研究では、自己批判は極めて有害であり、実際には目標達成への妨げになるという報告がある。自己批判的である人々はモチベーションが低く、失敗から立ち直りにくい。自己憐憫的な人々よりも、自らの向上について悲観的になりがちであるという研究結果が出ているのだ。

自己批判的であるよりも自己憐憫的であるほうが、より自信を持ちやすく、モチベーションも上がり、自己の中での情熱も育みやすくなる。失敗から立ち直るのも容易で、未来の自分に対して楽観的になることができる。以下に、自己憐憫スイマーになるためのヒントを挙げる。

◆<パフォーマンス批判>: 「自分は二つ目のターンで少しミスってしまった。それでレースがうまく運ばなかったのだ。次のレースでは、もっと壁に近づいてからターン動作に入るようにしよう」

◆<自己批判>: 「2回目のターンをしくじったせいでレースが台無しだ。なんでああなっちまったのか。俺はバカだ。あんなバカげたミスをするなんて、水泳をやめちまったほうが皆をがっかりさせずにすむんじゃないか」

自分のパフォーマンスを批判することにはまったく問題がないし、実際に必要なことである。そうやって何が間違いだったかを学ぶものであり、前進向上していけるのだ。だが自分自身を批判することは違う。自らのパフォーマンスを見つめ、足りなかったところに真摯に向き合うのに、自分を批判したり攻撃したりすることは必要ない。そういう姿勢は可能な限り避けるべきである。水泳で向上するのに、自分を侮辱する必要などない。この罠に陥らないことが大切だ。

「チームメイトに接するときと同じように、自分に接する」

想像してみよう。あなたは物凄く重要な大会の会場にいる。あなたはチームメイトたちとともに観客席に座り、同僚の一人がシーズンで最も大切なレースで泳ぐのを見つめる。その同僚は、とてもひどいレースをしてしまう。彼(女)は落ち着いて上手くやることができなかった。同僚は年月をかけて努力したが、最後のチャンスを逃してしまったのだ。同僚はプールから上がって道具をまとめ、観客席のチームエリアに戻る。あなたは同僚が大いに狼狽、落胆し、打ちひしがれていることを知っている。あなたは同僚の隣に腰掛ける。そんなとき、あなたなら何と声を掛けるだろうか?

同僚を責めるだろうか?無様なレースだったねと言って侮辱し、もう駄目だからやめちまえと言うのか?あるいは肩をそっと抱いて励まし、相手に心を寄せ、自信を取り戻させようとつとめるだろうか?きっと励まそうとするだろう。そう、そうすべきである。ここに重要な問題が浮かぶのだ。失敗した他者に対してそういう態度をとれるのなら、なぜ自分自身に対しても同じようにしないのか?

あなたにも、そういった励ましや現実肯定、サポート、共感があってしかるべきである。他の人たちと何ら変わらない。自分を他者よりも粗雑に扱うことは最悪の仕打ちであり、あなたはもっと価値のある存在なのだ。練習や大会の出来が悪かったときは、自分ならチームメイトにどう接するかを考え、それと同じように自分を扱う。自分を勇気づけ、サポートし、他者に対するように自分に共感するのだ。それが本当のself-compassionである。

(ウィル・ジョナサン: プロ・メンタルコーチとして、さまざまな世代のスイマーの指導に携わる)

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