予想どおりのニューヨーク・タイムズ

大坂なおみ選手が優勝した記事。

「全米オープン、セリーナ・ウイリアムズが審判を性差別的と非難、そして大坂なおみに敗れる」

怒り、ブーイング、そして性差別への非難が、大坂なおみの素晴らしい勝利に影を落とした。大坂は日本生まれの選手として、初めてグランドスラムタイトルを手にした。
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           <第2セット、ゲームペナルティを受けたセリーナは審判に抗議する>

大坂は堅実にプレーし、子供のころからのアイドル、セリーナ・ウイリアムズを6-2、6-4で下し、セリーナにとって史上最多タイとなる24度目のメジャータイトルを阻んだ。

だが、この試合はセリーナと、主審のカルロス・ラモスの間で繰り広げられた騒動によって長く記憶されることになるだろう。ラモス主審はセリーナ対し、第2セット中に3度のペナルティを課し、大坂の優勢が決定的なものになった。

一つ目は、セリーナが観客席にいるコーチのパトリック・モラトゴルからアドバイスを受けたと判断し、ラモスは警告を与えたのだった。これはルール違反である。セリーナは不正を働いたと指摘されたことに憤慨し、謝罪を要求した。その後、1ゲーム(試合じゃなくてセットの中のゲーム)を落とし、セリーナはラケットをコートに叩きつけて壊し、ポイントペナルティ(15、30、40のポイント一つ分)を課された。
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        <大阪なおみはこの勝利で、日本生まれの選手としては初のグランドスラムタイトル獲得となった>

ポイントを奪われた彼女はラモスを「泥棒」と呼び、主審は今度はゲームペナルティ(セット中の1ゲーム。サービスとリターンの継続はそのまま)を宣告した。セリーナはの怒りはさらに高まり、トーナメントレフェリーのブライアン・イアリーと、グランドスラム・アドバイザーのドナ・ケルソーに助けを求めた。

しかし、何も変更されることはなかった。大坂がプレーで上回り、勝利を確実にしていった。

「彼女(大阪)は素晴らしい試合をした」
セリーナはみとめた。
「勝利に値するプレーをしたということです」

大坂のパワー、スピード、そして周囲のゴタゴタをシャットアウトする精神力が、セリーナを上回った。セリーナはこの大会がオープン化されて以降、女子では最多となる7度目の優勝を狙っていた。昨年に長女を出産して以来、最初のタイトルにもなるはずであった。

しかし、大坂にとって喜びを爆発させるはずの瞬間は、悲しみの涙にあふれた。試合後のセレモニーは、怒ったファンのブーイングによって汚された。ラモス主審がセリーナを不当に扱ったと感じたのであった。閉じた屋根に叩きつける雨音がそれに加わり、大坂はバイザーを目深に下げて顔を覆い、涙を流した。
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       <第1セットを落とし、1ゲームをブレークされたセリーナは、ラケットを破壊>

現在20歳の大坂は3歳の時に米国に渡り、スポーツ界で最も突出した強さを誇るセリーナをアイドル視して育った。小学3年生の時には、セリーナについての作文を書いた。

「何でもセリーナのことばかりでした。彼女みたいになりたかった」

だが、この日、大坂のほうが上回った。

大坂は強烈なプレッシャーの中で鋼鉄のような心臓を見せただけでなく、セリーナよりも素早く動き、強烈で正確なショットを繰り出した。セリーナのアンフォースト・エラー(自分のミス)が21であるのに対し、大坂は14。セリーナの第1サーブ得点率が63%に対し、大坂は73%であった。

第1セットの第4ゲームをブレークし、セリーナをベースラインに近づけさせなかった(コーチのムラトゴルがベースラインでの打ち合いを好む)。

第2セットはカオスと化した。きっかけはちょっとした手のジェスチャーだった。

第2ゲーム、ラモスは、ムラトゴルがセリーナに前に出てプレーするように示したことを指摘した。のちにコーチもそれをみとめたが、これはコーチングの反則であった。だがムラトゴルは、どの試合でもどのコーチもやっていることだと主張し、それに対して主審が警告を宣したことが騒動の発端となった。ムラトゴルは、主審はセリーナに対し、そっと止めるように注意だけすればよかったのだと語った。

「年中、審判はそうやっている」
ムラトゴルは言う。
「そうすれば話はそこで終わっていたんだ。その後のゴタゴタは避けられることだった」
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  <セリーナはラモス主審に抗議する。ラモスはまず、スタンドのコーチから指示を受けたとして警告を宣し、セリーナは強く否定。2度目の違反はラケットの破壊で、ポイントペナルティ。最後は暴言で1ゲームの没収となり、大坂が5-3でリード>

セリーナは主審に近づき、あれは「サムズアップ(親指を」立てるしぐさ)」をしただけで、コーチングなど受けてはいないと訴えた。コーチングはグランドスラムの大会ではルール違反となる行為だ。

次のチェンジオーバー(ゲーム間の休憩)では、興奮は静まったかに思われた。セリーナはラモスに、あなたはコーチングと解釈したのかもしれないが、実際はやっていないと説明した。

セリーナはその後の大坂のサービスゲームをブレークし、第2セットを3-1とリードした。もしもこのブレークを守っていれば、試合の流れは変わったかもしれない。だが大坂がすぐにブレークバックし、怒れるセリーナはラケットをコートに叩けつけて破壊した。

これが"racket abuse penalty"(道具を粗末に扱った反則)となり、2度目のコードバイオレーションとなって1ポイントが没収された。大阪は次のゲームを15-0からスタートする。

そのことを知ったセリーナは主審に詰め寄り、謝罪を要求するとともに、自分がコーチングなど受けていないことを観客にアナウンスしてくれと求めた。生真面目で融通が利かないことで知られるラモスは、譲歩しなかった。

「謝ってください」
セリーナは言った。
「私は人生でズルなんかしたことはない。私には娘がいて、娘のために正しいことを示している。絶対にズルなんかしない」

大坂が4-3でリードの次のチェンジオーバーの時、不当な扱いを受けたと感じたセリーナはなおも動揺しているように見えた。彼女は主審に対し、自分からポイントを盗んだ「泥棒」と言い放った。ラモスは3度目のコードバイオレーションを宣告し、1ゲームの没収となった。大坂は労せずして5-3のリードとなり、チャンピオンシップまであと1ゲームとなった。

観衆の怒号とブーイングが渦巻く中、セリーナは涙を流して自分の正当性を訴えた。男子選手ならば同じことをしてもペナルティを受けなかっただろうというのだ。

「もっとひどいことをしている男子はたくさんいる。なのに私は女だから、女だからこんな扱いを受けるの?そんなの間違っている」
セリーナは審判の一人に言った。

試合後の記者会見でセリーナは、ラモス主審が自分の泥棒発言でコードバイオレーションを宣したのは男女差別だと批判した。

コート上での騒ぎの間、大坂はボールをバウンドさせ、ラケットチェックして壁を向いていた。試合の遅延にも動じず、スタジアムの異様な雰囲気にも飲まれることのなかった彼女の精神力が、勝利をもたらした。
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「観衆は本当に騒がしかったけど、私は聞いていなかった」
大坂は言った。
「何が起きているのか本当に聞こえていなかった。ボードを見たら5-3になっていた。それでちょっと混乱した。でも集中しなきゃと思った。彼女は偉大なチャンピオンだし、どこからでも逆襲してくるのはわかっていたから」

セリーナにとって、好ましからざるエンディングは、2009年の準決勝、キム・クライシュテルス戦に似ていた。この試合で彼女は、線審の女性を恫喝したとしてマッチポイントでポイントペナルティを課された。同じように2004年のジェニファー・カプリアティ戦でも騒動があった(この2試合の主審は女性だった)。

土曜日の決勝が終わり、大坂の歓喜はかき消された。彼女はボックス席の母親と涙の抱擁を交わし、コートに戻って表彰式に臨んだが、だれも喜んでいない異様なセレモニーであった。

選手二人が並んで立ち、ファンがブーイングを浴びせる中、動揺する大坂を見たセリーナは彼女に歩み寄り、新女王を抱きながらブーイングをやめてと訴えた。

大坂はスピーチでファンにわびた。ほとんどはセリーナを応援し、彼女の記録達成を望んでいたからだという。

「24回目のグランドスラムを本当に目指していたんでしょ?」
大坂は試合後に言った。
「みんな知ってる。CMも流れているし、そこらじゅう。でもコートに立ったら、私は違う人間みたいな感じ。私はセリーナファンじゃない。ただのテニス選手で、相手と戦うだけ」

そして目に涙を浮かべながら、大坂は言った。
「ネットで彼女とハグしたら、子供に戻っちゃったみたいな感じだった」
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